魔女の呪い

私は椅子に腰掛ける。

私は魔女に呪いをかけられて聴覚を失ってしまい、そうなっては仕方がないので家でのんびりとした時間を過ごすとした。

まあ、一週間後には治るっしょ!

そう言葉を発したつもりだが、聞こえないので不明瞭。映像だけの世界がここにある!

テーブルの上に置かれた週刊誌の丁度55p、殺人事件、ホメオパシー、都電もなか、私は都電もなかの写真を切り抜いた。

スクラップブックに貼られている写真は、

姉さんの寝顔、ロールシャッハテスト、試験管に入っていた頃の写真、姉さんが冬のコテージで殺した11人の写真。

懐かしいなあ、私はそれらの写真の横、空いたスペースにもなかの写真を貼る。

完成だ。

完成だ。

完成だ!

声を張り上げて叫ぶ、しかしまったく聞こえないので喉の震える感覚だけが私にはあった。

完成だ~~~~~~!

すると床が揺れる。振動を感じて、振り返れば姉さんが居た。私がおかしくなったと思ったらしい。

姉さんの右手には鉄パイプが血に濡れてかすかに光っていた。

姉さん、また人を殺したの?

私の耳が聞こえない事を知っていたので、姉さんは頷いて、鉄パイプから滴る血で床に字を書いた。

おまえのみみをきこえなくした、まじょをころしたよ

姉さんは漢字が書けないので、とっさの時にはひらがなか、カタカナしか書けないのだ。

ありがとう、姉さん!

私は姉さんに抱きついた。血のにおいと、魔女の香水のにおい(ヒキガエルと人間の爪を煮たもの)がした。

姉さんは照れていた。私を引き離すと、続けて字を書く。

でも、のろいをかけられて、つうかくをうしなった

よく見れば姉さんの身体は全身痣だらけになって、血のにおいも姉さんが事実、体中から出血していた。

恐らく、本当に痛覚を失ったのか試してみたのだろう。私だってそうする。

私はもう一度姉さんに抱きついた。今度はさっき以上の力で、思い切り抱きしめた。思い切り抱きしめた。

もっと抱きしめた。もっともっと抱きしめた。もっともっともっと抱きしめた!

音は聞こえないけど、骨が折れた様な感覚がある。でも姉さんは痛覚を失っていたので、笑顔で私の頭を撫でていた。

 

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