2019/3


憎しみと絶望が消えたとすれば

同時に 平穏は言葉を失い

無感覚の退屈に転がっていく

美しい言葉を嫌悪し

悪徳に身を窶せば

無情を知り空洞のままに

喉奥でむせる渇望は灰の臭いがする

愛はない 快もない

あなたの刃物も握れない手の平には

誰も言葉に出来ない悲しみがあった

塵となって 星となって

誰かの願いが安寧を欠いて

膿んだ傷口を癒せないままに

語る事すら禁忌となり

心一つで 何にでも成れる

夢物語 誰もが好きだろう

罪も過ちも消え去って 待ってもいない朝が来る

地獄は無い 天国も無い

私は一度も悲しみを感じた事などない

際限のない願望が躙る 誰かの明日と身の証明

暴虐の果てを瓦礫越しに覗く

お前を定義する価値観の支配


身を切らずに理想を唱え

祈らずに愛を歌う

言葉だけが流れていく

失うものは何一つ

感情のない機械に憧れ

拙いものを食い散らかす

退化したのは脳でも目でも

生まれつきの姿形でも

ただその性根が醜いのだと

全てが満たされないならば

善悪のない混沌に堕ちるまで

柔い感傷で倫理を蝕み

正を殺める屍の群れ

身の丈に合わない傲慢が

世界を死と、死と、死の向こうを

完全なる楽園に仕立て上げる

この世の地獄を誰が作る

嘆きばかりが積み重なり

この世は思考を繋ぎ止めるだけの

実験場へと変わり果てる